夜がな夜っぴて考え事…

趣味で自由に小説書いてます

散文NEO-2『自己紹介』

 私の名前は東雲中(しののめ あたる)。とある地方の、とある会社に勤める会社員である。とある部署の主任として、日々業務に勤しんでいる。年齢は、2年前の自己紹介では「四捨五入すると40歳」と書いていたが、いよいよ今年40歳を迎えることとなった。中肉中背。眼鏡あり。未婚。趣味は読書、音楽鑑賞…etc

 相変わらず良い出会いはなく、独身貴族を謳歌している。2年前から変わったことといえば、職場環境である。今年の春から私はS市で働くことになった。会社の方針で新事務所を立ち上げることになり、その立ち上げメンバーとして私に白羽の矢が立った。独身で異動に対してのフットワークの軽さが主な理由であろうが、指名されたからには気合いが入らないわけではない。とはいえ、新事務所と言いつつ、メンバーは私を含めて常駐4名、その他外回りの営業がちょっと立ち寄る程度の小さな事務所である。雑居ビルの一部屋を間借りした簡素なもので、冗談半分で「所長」と呼ばれたりするが、全くそのような実感が湧くほどのものでもない。しかしながら、他の社員の中で立場的には私が1番上なので、責任を持ってやっていく所存である。

「ちょっと小林! ファイル出しっぱなしにするなって言ったじゃん!」

 声を上げて小林君を指導するのは入社5年目の花崎さん。勝気な女性で、物怖じしない性格は強みでもあるが弱みでもある。仕事も一通り覚え、徐々に一人で仕事を任せられるようになった信頼のおける社員である。

「あ、すみません。今片づけます」

 花崎さんに言われ、ゆっくりと立ち上がったのは入社3年目の小林君。花崎さんに比べて物静かで、どこか飄々とした雰囲気を持ち合わせているが、根は真面目な男である。少々表に出る感情が薄いために誤解を招きがちである点が難点である。

「まぁまぁ、そんなに大きな声出さなくても」

 そう言って花崎さんをなだめるのはベテラン社員の荒川さん。二人にとっては母親のような存在である。安定感は抜群で、この事務所の精神的支柱と言えよう。

 

 なんやかんやで、このメンバーでやっていくこととなった。

 事務所が開設されてまだ1週間。設備も備品も不十分な状態でのスタートとなってしまったが、まぁ何とかやっていくしかない。

「ちょっと、小林! これも!」

…まぁ、何とかやっていくしかない。